はじめに
デヴィッド・リンチのキャリアの中でも異色の作品のひとつとされる『エレファント・マン』(1980年)。
リンチにとって、2作品目となる今作ですが、カルト的な作風で知られるリンチが、どのようにしてこの感動的なヒューマンドラマを手がけたのか?
本記事では、映画の制作経緯やリンチの独自性、作品の評価について詳しく掘り下げます。
『エレファント・マン』とは?
出典:iMDb
実在したジョゼフ・メリック(映画内ではジョン・メリック)の半生を描いた作品。
「エレファント・マン」のモデルになったジョゼフ・メリックは実在した人物で、イングランドのレスターに1862年に生まれました。
幼くして一部の骨と組織が過剰成長するために生じるプロテウス症候群を煩い、好奇の目に晒されながらも、27年間生き抜いた。
映画は、19世紀のロンドンを舞台に、先天的な障害を持つメリックが見世物小屋から医師トリーヴスに救われ、社会と関わる中で尊厳を取り戻していく物語です。
出演:
ジョン・ハート(ジョン・メリック)
アンソニー・ホプキンス(フレデリック・トリーヴス)
ジョン・ギールグッド
アン・バンクロフト
メル・ブルックス(本作のプロデューサー)がリンチを起用した理由
『イレイザーヘッド』(1977年)を制作したあと、リンチは他人の脚本を手掛けたいと思うようになる。
そんな中、当時の友人のプロデューサーから渡された内のひとつが、「エレファント・マン」の脚本だった。
そのタイトルを聞いた時、『頭の中で小さな爆弾が爆発した。』と回想する。
その後、コメディ映画で活躍したメル・ブルックスのもとに話が行き、当初ブルックスはリンチのことを知らず、前作の「イレイザーヘッド」を鑑賞することに。
観賞後、リンチのもとに駆け寄り抱きしめこう言った。
『君は天才だ!愛している、合格だ。』
補足説明
メル・ブルックスは、俳優、脚本家、プロデューサー。コメディ映画を主に手掛けているが、シリアスな映画にも挑戦している。
リンチは、ブルックスのことを「永遠に感謝するだろう」と、尊敬と感謝の念を述べています。
映像美とリンチらしい表現
モノクロ映像の採用:
19世紀のロンドンの雰囲気を表現し、あえてモノクロにすることで感情的な深みを持たせることに成功。
インダストリアルな音響演出:
リンチ独特の環境音やノイズ、弦楽器サウンドを使い、独特の世界観を演出。
普遍性と社会への風刺
本作は単なる伝記映画ではなく、「社会の異質なものへの偏見と受容」をテーマにしています。
メリックの扱われ方を通して、「人間の尊厳」と「社会の偽善」をリンチは鋭く描いている。
これまでのリンチ作品と異なり、明確な感動の要素が強く、幅広い観客層に響いた作品です。
映画の評価と影響
批評家からの高評価
この作品は、アカデミー賞8部門ノミネート(作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞など)され、社会的にも受け入れられました。
メリック役のジョン・ハートの演技は絶賛され、この作品を機にアカデミー賞に「メイクアップ賞」が新設されるきっかけとなった。
1981年の日本での興行収入一位を記録。
補足説明
特殊メイクもリンチが手がけることになっていたが、うまくいかず、クリス・タッカーが担当した。
リンチのキャリアに与えた影響
本作の成功により、ハリウッドでの監督としての地位を確立したことは言うまでもないでしょう。
まとめ:リンチにとっての『エレファント・マン』とは?
『エレファント・マン』は、リンチの作品の中で最も感情的で人間味のある映画で、2作品目にしてもっとも大衆に評価された映画となりました。
幻想とリアリズムの融合が見事に成功し、彼の作風の幅を広げた作品。
デヴィッド・リンチを単なるカルト監督ではなく、「実力派監督」として世界に知らしめた重要な作品であると言えるでしょう。