はじめに
デヴィッド・リンチの映画は、彼一人の力ではなく、優れた俳優・音楽家・撮影監督・プロデューサーたちとともに作られてきた。
本記事では、リンチ作品を支えた重要な人物たちに焦点を当ててご紹介します。
俳優陣:リンチ作品の顔となったキャスト
① カイル・マクラクラン(Kyle MacLachlan)
- 『デューン/砂の惑星』(1984)で主演を務め、リンチと初タッグ。
- 『ブルーベルベット』(1986)で青年ジェフリー・ボーモントを演じ、リンチ作品の象徴的存在に。
- 『ツイン・ピークス』ではデイル・クーパー捜査官役でカルト的な人気を獲得。
公私共に仲がいい2人ですね。
| 豆知識 |
リンチはカイルのことを『ケイル』と呼ぶ。
その理由は、『デューン/砂の惑星』のプロデューサーが、カイルと発音できずに『ケイル』と呼んでいたため、リンチもそう呼ぶようになった。
② ローラ・ダーン(Laura Dern)
- 『ブルーベルベット』(1986)からの長年のコラボレーター。
- 『ワイルド・アット・ハート』(1990)ではニコラス・ケイジと共演し、リンチの狂気と情熱を表現。
- 『インランド・エンパイア』(2006)では主演を務め、最も挑戦的な演技を披露。
- 『ツイン・ピークス・ザ・リターン』では、重要人物「ダイアン」を演じる。
出典:Variety
2019年にリンチは”ガバナーズ・アワーズ”という、映画業界の個人を称えるために毎年開催される授賞式で受賞しましたが、
その際には、カイル・マクラクランと共にプレゼンターを務めました。
| 豆知識 |
リンチはローラのことを『tidbit / ティドビット』と呼ぶ。(tidbit=ニュースの断片、役立つ情報)
その理由は、あまりよくわからないが、リンチが言ったとされるのは、『あなたはtidbitだ。ちょっとしたものなんだから。』とのこと。
③ シェリル・リー(Sheryl Lee)
- 『ツイン・ピークス』でローラ・パーマー役を演じ、わずかな登場シーンで伝説的存在に。
- 『ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間』(1992)では彼女の悲劇的な物語を全編で演じきる。
- 『ワイルド・アット・ハート』(1990)で良い魔女の役を演じた。
| 豆知識 |
『ツイン・ピークス』の後半で、シェリル・リーがローラの従兄弟役で出演する決め手となったのは、リンチがリーの演技力に惚れ込んだから、と言われている。
④ ハリー・ディーン・スタントン(Harry Dean Stanton)
- 『ワイルド・アット・ハート』(1990)に出演。
- 『ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間』(1992)に出演
- 『ツイン・ピークス・ザ・リターン』(2017)に出演
- 『ストレイト・ストーリー』(1999)に出演。
- 『インランド・エンパイア』(2006)に出演。
- スタントン最後の出演映画になった『LUCKY』でリンチが俳優として共演。
| 豆知識 |
リンチとスタントンの友情は特別なものがあり、スタントンの死後、リンチは「彼のいない世界は、映画界にとって大きな損失だ」と語り、その偉大な才能に敬意を表している。
⑤ ジャック・ナンス(Jack Nance)
- 『イレーザーヘッド』(1977)のヘンリー役で知られる。
- 『デューン/砂の惑星』(1984)に出演。
- 『ブルー・ベルベット』(1986)に出演。
- 『ツイン・ピークス』(1989-1990)でも、ピート役として印象的なレギュラー出演。
- 『ワイルド・アット・ハート』(1990)に出演。
- 『ロスト・ハイウェイ』(1997)に出演。
出典:iMDb
| 豆知識 |
ジャックは、俳優としてリンチの作品にしか出演していない稀な俳優人生だった。
ロスト・ハイウェイの撮影後に不可解な死を遂げている。
⑥ キャサリン・コールソン(Catherine Coulson)
- 『ツイン・ピークス』(1990)に出演。
- 『ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間』(1992)に出演
- 『ツイン・ピークス・ザ・リターン』(2017)に出演
音楽:リンチワールドを彩るシンガー・作曲家たち
① アンジェロ・バダラメンティ(Angelo Badalamenti)
- 『ブルーベルベット』以降、リンチ映画のほとんどの音楽を担当。
- 『ツイン・ピークス』の「ローラ・パーマーのテーマ」は伝説的な名曲。
- 『マルホランド・ドライブ』の夢幻的なサウンドも手掛けた。
② ジュリー・クルーズ(Julee Cruise)
- 『ツイン・ピークス』の「Falling」でリンチ×バダラメンティとコラボ。
- 彼女の透き通る歌声がツイン・ピークスの幻想的な雰囲気を作り出した。
③ レベッカ・デル・リオ(Rebekah Del Rio)
- 『マルホランド・ドライブ』の泣き女役で「Llorando」を熱唱。
- 『ツイン・ピークス・ザ・リターン』のパート10で「No Stars」を披露。
映像を支えた重要スタッフ
① フレディ・フランシス(Freddie Francis) – 撮影監督
- 『エレファント・マン』(1980)でリンチのモノクロ映像美を演出。
- クラシックな撮影手法とリンチの奇抜な世界観が融合。
② ピーター・デミング(Peter Deming) – 撮影監督
- 『ロスト・ハイウェイ』『ツイン・ピークス The Return』『マルホランド・ドライブ』の映像を担当。
- 夢のような映像と不穏な暗闇のコントラストを生み出した。
プロデューサー・編集・サウンドデザイン・視覚効果
① メアリー・スウィーニー(Mary Sweeney) – 編集者 & プロデューサー
- 『ツイン・ピークス』『ワイルド・アット・ハート』『ロスト・ハイウェイ』『ストレート・ストーリー』『マルホランド・ドライブ』などを編集。
- 後にリンチと結婚(1ヶ月ほどで離婚)。
② ジャック・フィスク(Jack Fisk) – 美術監督
- 『ストレイト・ストーリー』や『マルホランド・ドライブ』でリンチの世界観を美術で支える。
- 『イレイザーヘッド』では出演もしている。
- リンチとは旧知の中で、共に同じアートスクールに通っていた。
③ アラン・スプレット(Alan Splet) – サウンドデザイナー
- 『イレイザーヘッド』の不気味なサウンドを生み出し、リンチの音響演出を決定づける。
- リンチの駆け出しのころからの友人で、かつてはルームメイトでもあった
④ Noriko Miyakawa – 視覚効果
- 『ツイン・ピークス・ザ・リターン』や短編などで、視覚効果を担当
まとめ
デヴィッド・リンチの映画は、個性的な俳優、幻想的な音楽、実験的な映像表現を支える多くの才能によって生み出されてきました。
あんな個性的な人でありながら、思いやりを感じ、みんなに愛されているのが伺えます。
そこには、根底に溢れる愛があるからでしょう。